Previously on IMSS

日時 2021年6月30日(水)14:50­–16:20 頃

報告者:中本裕哉 氏(大分大学経済学部)

報告タイトル「耐久財のライフサイクル分析: 自動車のゆりかごから墓場まで」

場所 オンライン

報告内容 

低炭素社会の実現に向けて代替燃料車(AFVs: Alternative fuel vehicles), すなわち, (プラグイン)ハイブリッド車(HEV), 電気自動車(EV), 燃料電池車(FCV)が世界各国で急速に普及している。AFVsは走行起源の環境負荷が極めて小さい一方, バッテリーなどの積載により車両製造時にガソリン車(GV)と比べてより多くのエネルギーや物質が投入される。このため, 今後の自動車に関する環境対策は, 自動車走行時だけでなく, 自動車の資源調達から製造, 使用, 廃棄に至るライフサイクル全体「ゆりかごから墓場まで」での環境負荷を考慮することが決定的に重要である。本報告では自動車のライフサイクル分析手法の解説を行い, 既存研究のレビューと今後の課題について議論する。

日時 2020年11月6日(金)16:30­–18:00 頃

報告者:井川 純一 氏(大分大学経済学部)

報告タイトル「SNS投稿が消費者の購買意思決定に及ぼす影響ーーInstagram投稿に着目してーー」

場所 オンライン

報告内容 

インターネット上の購買意思決定は、AISAS (注意 (Attention) →興味 (Interest) →検索 (Search) →行動 (Action) →情報共有 (Share)) のプロセスモデル (秋山, 2007) を経ること知られている。ネット上では、誰もが瞬時に情報を得ることができるため、記憶の保持というプロセスを経ずに検索、行動 (購買) するだけでなく、口コミ等を情報共有するというディビジョンまでも検討する必要がある。SNSにより個人の発信力が増加していることからも、情報共有の影響にはより大きくなっていると考えられる。一方、これまでの研究では、主にマーケティング分野におけるトライアルアンドエラーに関する考察が報告されるのみで、理論的・定量的な検討はあまり検討されてこなかった。

そこで本研究では、報告者が学生と共同で行った複数の研究結果 (主にInstagram) を報告しながら、SNSと購買に関する研究についてのこれまでの知見を総括したい。次年度に向けての研究を構想している段階のため、フロアからの活発な意見を聞きながらまとめて行ければと考えている。

第11回大分社会科学学際研究会 (OIMSS)

日時 2020年5月20日(水)19:00-20:00

タイトル Notes on the emergence and persistency of unequal exchange in intertemporal economies

報告者 金子創 (大分大学経済学部社会イノベーション学科)

場所 : オンライン

This presentation provides a brief overview on the issues of unequal exchange (UE) in the general equilibrium approach. In the literature, the concept of UE (or exploitation) is mainly custom-defined for static models with specific assumptions. We summarize features of traditional analyses and give a dynamic generalization of the framework. The generalization enables us to find examples of non-exploitative equilibrium paths. Such examples have puzzling property and lead the problem of defining the concept of UE.

第11回大分社会科学学際研究会 (OIMSS) は、試験的にZoomを用いて行います。15分程度の発表+45分の議論の予定です。

研究室からでも自宅からでもリラックスしてお気軽に参加ください。終了後、オンライン懇親会を開催予定としています。そこからの参加でもどうぞ。

参加希望の方は事前登録必須です。以下のページから申し込みください。なお、発表は日本語で行います。

https://oita-u.zoom.us/meeting/register/tJMsf--gqDojH9x0EGUjukDNRvouJjIivyK1

登録後、ミーティング参加に関する情報の確認メールが届きますので確認ください。

第10回大分社会科学学際研究会 (OIMSS)

日時 2020年2月20日(木)14:50-16:20

タイトル 「意思表出困難・家族等不在の患者の医療同意について考える」〜法学的視点から〜

報告者 藤村 賢訓 (大分大学経済学部地域システム学科)

場所 : 経済学部第12演習室

意思表出困難・家族等不在の患者の医療同意について考える」〜法学的視点から〜

障害者や認知症高齢者などの意思表出困難者に対して医療行為の提供が必要となった場合に,必要とされる治療行為への同意に際しての成年後見人や家族の代諾等の関与のあり方については,成年後見人の医療同意権の問題として,議論がなされてきました。近時国連障害者権利条約12条の観点から,代行決定と本人意思の矛盾が焦点化され,福祉分野を中心に代行決定から意思決定支援への転換がなされるべきとの論調が高まっています。本報告では,医療同意の基本原則を確認したうえで、とりわけ代行決定としての医療同意につき,意思決定支援は代行決定と矛盾せず,特定の関係者に全面的決定権限を与えない代行決定の在り方に関して,成年後見制度利用促進法上設置が進められている市町村中核機関を視野に含め、英国独立代弁人制度,スウェーデンの社会サービス法に基づく公的後見制度についても若干触れつつ,「本人意思が担保または推定される共同決定としての医療同意」の在り方について検討してみたいと思います。

参考文献

藤村 賢訓『決定能力を欠く者に対する医療行為の同意に関する考察-英国およびスウェーデンの公的アドヴォカシー制度を示唆として-』深谷格・西内祐介編「大改正時代の民法学」成文堂,2017,P645

藤村 賢訓『高齢者の意思決定支援(成年後見法)』,九州法学会会報2017,P45-49

第9回大分社会科学学際研究会 (OIMSS)

日時 2020年1月29日(水)14:40-16:10

タイトル(仮):「中小企業とメンバーシップ/労使コミュニケーション」~中小企業家同友会をフィールドとする日本的雇用システムの行方に関する考察~

報告者 井上桂太郎 (大分大学経済学研究科)

場所 : 経済学部第第11演習室

日本的雇用システム(=成員に対する長期的な生活保障・能力開発を図る雇用・労働のしくみ)に関しては、「もはや終身雇用の時代ではない・・」等の巷の言説に相違し、「少なくともそのコアの部分は維持され続けている」との興味深い先行研究がなされています。一方で、中小企業は日本的雇用システムの「外縁部」とされ、典型的な日本的雇用システムの適用からは除外されている、との認識もあるようです。更には、「こうした中小企業こそが日本経済停滞の原因でありその淘汰が不可欠」との指摘さえなされています。

 本研究においては、「労使コミュニケーションの経営資源性」を指摘した、呉学殊の先行研究を手がかりに、労使コミュニケーションを重視するとされている「中小企業家同友会」で活動する企業を主な研究フィールドとしています。経営者オーラルヒストリーや日常活動への参加・同道の研究手法により、中小企業の現場における労使コミュニケーション実践の具体的な姿や、経営者をして労使コミュニケーションへと駆り立てる力の源泉、更には労使コミュニケーションが経営資源へと至るメカニズム等について考察したものです。

 またこれらを通じ、中小企業においても日本的雇用システムは意外なほど堅固に志向されており、政策形成にあたってもこうした傾向を十分考慮することが必要とされるであろう点についても検討してみたいと思います。

第8回大分社会科学学際研究会 (OIMSS)

日時 2019年7月17日(水)14:40-16:10

タイトル 『保育・子育て支援の地理学』の到達点と課題

報告者 久木元 美琴 (大分大学経済学部地域システム学科)

場所 : 経済学部第第12演習室

報告者はこれまで,保育・子育て支援をめぐる「地域固有の問題」について,都市社会地理学及び福祉の地理学の観点から検討してきた。具体的には,大都市で保育所待機児童問題が顕在化しやすい地域的背景として,都市空間構造による時空間的制約,女性の働き方の変化とその地域差,家族構造に着目しながら大都市(都心・郊外)・地方都市・農村それぞれの子育て支援の課題を分析し,拙著『保育・子育て支援の地理学』(2016年,明石書店)において報告した。その際,分析の焦点は施設需給の地域差や空間性にあり,調査分析対象は供給主体としての行政や保育事業者,需要主体としての保育所利用者(親)であった。他方,近年では,保育士労働力の不足や潜在化など,フォーマルな施設サービス需給のみに注目した研究枠組の限界が露呈している状況がある。本報告では,こうした状況を踏まえ,隣接他分野や海外地理学の動向を参照しながら,保育・子育て支援の地理学に今後必要とされる視点や課題を検討したい。


第7回大分社会科学学際研究会 (OIMSS)は現代経済学研究会と共催で行いました。

日時 2019年5月22日(水)13:10-14:40

タイトル:「広域行政の効率化と消防本部の最適管轄人口規模の検討」

報告者:小野 宏 氏 (大分大学経済学部経済学科)

場所:経済学部第第11演習室

行政サービスの提供は,単独の地方公共団体によって行われることが多かったが,近年では,地方公共団体間の連携によって行われることも,積極的に進められている.上下水道・ごみ処理・消防などといった行政サービスの提供は,これまでも複数の地方公共団体の連携によって行われていたケースが珍しくない.なかでも,消防については他の行政サービスと比べて,早くから広域化が取り組まれてきている.そこで,本報告では,今後様々な行政サービスで進んでいくことが予想される広域連携を分析する際の一助となることを目的として,消防の広域化の現状や効果等を紹介する.また,消防庁によって示される広域化の目標値は,その根拠が必ずしも明確ではないため,中井(1988)等のモデルを用いて推計した消防本部の最適管轄人口規模を提示する.

第6回大分社会科学学際研究会 (OIMSS)

日時 2019年2月6日(水)10:40-12:10

タイトル:「初年次教育について」

場所:経済学部第第12演習室

経済学部では,1年次に「導入セミナー」「基礎セミナー」の単位が必修化されており,学生全員が初年次から少人数制のゼミに所属している。一方,多様な専門分野を持つ教員が所属する経済学部では,初年次教育において何を第一義的な目標とすべきか,どの程度までの専門的知識を求めるかについては,教員間でコンセンサスが得られにくい。そこで今回のOIMSSでは,「初年次教育」をテーマに4名の報告者から話題提供をいただき,それぞれが初年次教育に関わる上で感じた課題や方法論、試行錯誤について情報共有し議論する。

話題提供者 (各報告は5~10分程度)

1. 『経済学部における初年次教育の現状』 江原慶

経済学部では,3・4年次の演習(ゼミナール)に先立って,1・2年次にも「導入セミナー」や「中級セミナー」といった科目を準備し,通年で演習相当の科目を提供している。今回は,特に初年次でのセミナー科目に焦点を当て,導入の経緯を振り返りつつ,その現状についての理解を共有し,今後の運営方針を議論していくための礎を作ることを目的とする。

2. 『トリオで行う導入セミナー』 越智学

報告者とその愉快な仲間たちは,導入セミナーを行う上での目標を大学生に求められる基本スキルの取得,学生同士の交流活発化を目的に3ゼミ合同で運営してきた。本発表では,複数のゼミを合同で行う初年次教育について報告し,そのメリットデメリットについてフロアとディスカッションしたい。

3. 『断絶する演習科目と接続する教員の試行錯誤』柴田茂紀

本報告では、発表方法や論文・レポート執筆といったアカデミック・リテラシーを事例にして、どのような初年次教育が3・4年次演習に効果的なのか考える。初年次に「教わっているはず」のことを3年生が「教わっていない」という要因を5つに分け、各教員の試行錯誤やアイデアを出し合いながら議論を進める。

4. 『無料で利用できる教育支援サービスをもちいた授業運営』久保田亮

大分大学は「moodle」や「授業支援ボックス」といった教育支援サービスを導入している。この発表では,これら学内リソースやGoogle for Educationといった無償で利用できる教育支援サービスの具体的な活用方法,並びにこれらを利用した授業運営の利点と欠点について,私見を共有する。


日時 2018年11月28日(水)14:30-16:00

報告者:安部 恵祐 氏(大分大学 全学研究推進機構)

報告タイトル:「大分大学でのURA活動について」

場所:経済学部第7演習室

報告内容

現在、各大学でリサーチ・アドミニストレーター(URA)等の研究活動の管理・支援を行う専門人材の配備が進んでいる。一般的にURAは研究推進させ、産学連携や事業化までの育成支援を目指す。また、URA業務には、プロジェクト資金を獲得するまでのプレ・アワードとプロジェクト自体の管理・運営を行うポスト・アワードの2つの業務フェーズがある。

しかし、実際には研究管理だけでなく、授業開発と実施、IR(機関調査)、オープンイノベーション、大学経営支援等、多岐の業務を行っている。近年では、このような複合的な業務を行うURAはUA(ユニバーシティ・アドミニストレーター)と呼ばれている。

今回、1) URAになるまでの経緯、2) URAの活動(外部資金獲得とCOC+事業支援等)、3) 今後の活動(教育学研究等の紹介)について紹介する。

第4回大分社会科学学際研究会 (OIMSS)

日時 2018年7月18日(水)13:00­–14:30

報告者:小池澄人 氏(大分大学大学院経済学部研究科博士前期課程1年)

報告タイトル「物理主義による意識の自然化と認識ギャップ」

場所 大分大学旦野原キャンパス経済学部棟第12演習室

報告内容 

近年、心の諸科学の成果によって自然科学による心の理解は飛躍的な発展を遂げていると思われる。このような事実はわれわれに「自然科学によって心が完全に解明される日が来るかもしれない」という希望を抱かせる。このような考え方は、自然主義的であると言われる。しかし、心のひとつの側面である「意識」には、自然主義的に理解することが困難な側面が存在すると主張されることがある。その代表的な論者であるチャーマーズは、意識を自然主義的に理解するという課題を、「意識のハード・プロブレム」として提示する。チャーマーズは、意識のハード・プロブレムは物理主義の枠組みでは解決不可能であるとし、物理主義は偽であると論じる。

このような反物理主義的な主張に対して、物理主義者は何らかの応答を迫られている。物理主義者は意識の自然主義的な理解の可能性を示し、物理主義を擁護せねばならない。

本発表の目的は、チャーマーズの意識のハード・プロブレムと彼に代表される反物理主義者による物理主義への批判に対して、物理主義者がどのように応答することができるかを検討することである。

第4会OIMSSは初の院生発表でした。発表者が大阪大学人間科学部人間科学科に提出した卒業論文を本研究会のために再構成したもので、非常に活発な議論が行われました。

第3回大分社会科学学際研究会 (OIMSS)

日時 2018年5月17日(木)15:00­–17:00 頃

報告者:井川 純一 氏(大分大学経済学部)

報告タイトル「それって本当に燃え尽き? 典型的バーンアウトに関する多角的検討」

場所 大分大学旦野原キャンパス経済学部棟第1演習室

報告内容 

バーンアウトはFreudenberger (1974) による概念の提唱以来、「うつなどその他の精神医学的概念のラベルの張替えに過ぎない」という批判を浴び続けてきた。その理由として、現在一般に使用されている質問紙を用いたバーンアウトの測定法では、がんばりすぎた結果生じる典型的バーンアウトだけではなく、その他のストレス反応も混在して高バーンアウト傾向として測定されてしまうことが挙げられる。一方、この典型的バーンアウトがどのような状態なのか、またどの程度の割合で発生するのかについての検討はこれまでほとんど行われてこなかった。そこで、本発表では「典型的バーンアウトとはなにか?」をテーマに従来の横断的質問紙法に加え、概念の持つイメージに着目した調査、仮想的なカウンセリング場面を想定した実験室実験等を用いた一連の研究を紹介する。

日時 2018年3月23日(金)15:00-17:30

報告者:阿部 誠 氏(大分大学経済学部)

報告タイトル「地方圏に暮らす若者のキャリアを考える」

場所 大分大学旦野原キャンパス経済学部棟4階第12演習室

1990年代以降、日本の雇用情勢が厳しくなるなかで、若年失業者やフリーター、ニートなど若者の雇用問題やキャリア形成の難しさが、大きな社会問題となってきた。それは単に就職が難しいという問題にとどまらず、キャリアの展望がもちにくい、さらに、その結果として生活の展望ももてないという閉塞した状況にあるといえる。最近、労働情勢が改善し、若者の雇用環境も変化しつつあるとはいえ、企業の雇用管理が変化したなかで、若者のキャリア形成の難しさは大きくは変わっていないと思われる。

 そうしたなか、多様な雇用機会に恵まれない地方圏で暮らす若者のキャリアは、大都市圏の若者と比べても、いっそう展望を開くことが難しい。地方の雇用情勢が厳しいなかでも若者の地方への定着はむしろ強まっている。それでは、地方圏の若者はどのような就業行動をとり、いかなるキャリアを歩んでいるのであろうか。

 報告者は、こうした問題意識にたって、地方圏の若者にたいするヒアリング調査に取り組んできた。今回の報告では、東北地方、九州地方、そして沖縄県での調査の結果にもとづいて㈰地方圏の若者の地域的移動の変化、㈪地域の産業構造が若者の就業・キャリアに及ぼす影響、㈫地方圏の若者のキャリアの特徴と問題点、㈬若者のキャリア形成を阻害する要因などの点について論じる。

 なお、本報告の主要な部分については、次の文献を参照されたい。

  石井まこと、宮本みち子、阿部誠編(2017)『地方に生きる若者たち——インタビューからみえてくる仕事・結婚・暮らしの未来』旬報社、第3章